1.脳腫瘍(良性腫瘍)
●髄膜腫
髄膜腫に対する術前塞栓術は、栄養血管からの血流の遮断によって腫瘍内血流を低下させることで、摘出術中の出血量の減少や摘出率の向上などを目的として行われます。その有用性については、これまでも多数報告されており広く知られているところですが、その腫瘍内血流低下の客観的評価法は散見されるものの未確立です。
当教室では、髄膜腫に対する塞栓術前後にsuperselective ASLという超選択的に血管ごとの灌流領域が描出できる非侵襲的なMRIの撮像法を用いて、腫瘍内血流分布の詳細な評価を行い、その実行可能性や塞栓効果の予測、腫瘍内血流分布の変化が手術戦略に与える影響などを研究しています。

2.下垂体腺腫の血流動態から見た臨床像
下垂体は頭蓋の中心に位置し、脳からの情報を受けてホルモンを分泌する器官で、私たちのライフステージに合わせたホルモンの分泌・調節がなされています。下垂体にはその働きを支えるために、図のように、非常に複雑で豊富な血管網が発達しています(出典;Plate ⅩⅦ from Scheithauer BW. The hypothalamus and neurohypophysis. In: Kovacs K. Asa SL, eds. Functional endocrine pathology. Boston: Blackwell Scientific; 1991:170-244.)。私達の研究では、この血管網は下垂体腺腫の増大とともに変化し、3種の血流パターンを示すことを初めて発見しました。また、各パターンが術後の再発・再増大に影響を与えていることを明らかにしました(出典;Ito M et al. World Neurosurg 107:137-141,2017)。更に、これらの血流パターンは術後のホルモン分泌の回復や機能障害にも関連していると考えられ、研究を進めています。


