間脳下垂体疾患
間脳・下垂体部は、ホルモンを介して年齢・性別などのライフステージや日常生活を支えている非常に特殊な脳です。下垂体の周囲には視神経のほか、瞳孔や眼球・眼瞼(まぶた)の動きといった眼に関わる神経が存在しています。下垂体からは成長ホルモン・性腺刺激ホルモン・乳汁分泌ホルモン・甲状腺刺激ホルモン・副腎皮質刺激ホルモン・抗利尿ホルモン・子宮/血管収縮ホルモンが分泌されます。同部に病変が生じると、ホルモン分泌障害や視機能障害、眼球運動障害や眼瞼下垂などを生じ、時に高次脳機能障害を呈する場合があります。
手術は開頭による顕微鏡下手術と内視鏡下手術に大別されます。大きく、硬い腫瘍には開頭手術が選択されますが、多くは低侵襲な内視鏡下手術(経鼻的手術・経脳室的手術)が適用されます(右は内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術)。
ホルモン分泌不全が見られた場合、ホルモン補充療法が行われます。治療後、時間が経ってから見られることもあり、長期間の観察が必要です。
<代表的な疾患>
●下垂体神経内分泌腫瘍(旧;下垂体腺腫)
脳腫瘍で3番目に多く、2−3人/10万人に発生するとされています。無症状例では定期的に画像検査を行います。腫瘍により視機能障害などを呈した場合や、ホルモンの過剰症状により生活の質が低下した場合、内視鏡下での経鼻的手術が検討されます。乳汁分泌ホルモン産生腫瘍では薬物治療が第1選択となり、治療困難例では手術を行う場合があります。
●頭蓋咽頭腫
周囲の重要構造物と強く癒着し、全摘出困難な疾患です。再増大しやすいため、放射線治療を加えて予防します。脳が未成熟な小児では放射線治療の弊害が懸念されるため、再増大の際は可能であれば手術を検討します。
●脊索腫
手術での可及的摘出後、疾患制御に有効とされている重粒子線治療を行うことがあります。
●胚細胞腫瘍
小児〜若年成人で好発する疾患で、血液中の腫瘍マーカーや組織診断で診断ののち、放射線&化学療法が検討されます。
●ラトケ嚢胞
非腫瘍性病変であり、視機能低下時には内視鏡下での嚢胞開窓が検討されます。
*この他、リンパ腫や下垂体炎、軟骨肉腫、
転移性腫瘍といった稀な疾患に対しても個々に合わせた治療を検討しています。
治療から術後のケアに至るまで、内分泌内科や小児科をはじめ、放射線科、病理診断科といった他の診療科と密に連携しながら、丁寧な診療を心がけています。